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SPEECH × WELFARE

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京都大学 大学院情報学研究科 音声メディア研究室 特定助教
博士 (情報理工学)


 

聞き上手な音声対話システム

音声対話の研究を通じて、人が話しやすい対話の仕方や、どのように話を聞けば話し手の気分の向上するのかを研究しています。とくに、私たちの研究グループでは、傾聴ロボット「きくロボ」を実装し、子どもから高齢者まで様々なお話の聞き役をしています。例えば、相槌とは「うん」などの短い発話で、話し手が自分のターンとして話している間に聞き手が挟むことで、話しを促進する役割があります。システムでは、聞き役が相槌を打つとき、話し手の発話に高さや強さなどを同調させた相槌を打つようにしています。とくに日本語では強さを合わせることが重要であることが研究によって明らかになりました。


 

自閉スペクトラム症の状態評価のための対話分析

発達障害のひとつである自閉スペクトラム症のコミュニケーションのについて、音声の分析によってどういう点に特徴があるかを調べています。とくに、対話相手と発話の特徴(イントネーションなど)が似てくる現象(同調)の度合いの違いや、いつ頷くかに着目しています。それによって自閉スペクトラム症のコミュニケーションの特性がどこに現れるかが明らかになります。将来的には、ニューロダイバーシティ(神経・脳の多様性)のある社会を目指し、多様なコミュニケーションの特性を繋ぐ技術のために研究の知見を役立てていきたいと考えています。


 

吃音(言語障害)のメカニズムの解明

吃音とは、発話でつっかえる(出だしや途中で止まる、音を繰り返す等)が起こる症状を特徴とする発話の障害です。コミュニケーションで困難を感じたり、社会参加に支障が出る場合は支援を必要とします。私たちはとくに、急速に言語が発達する幼児期において、子どものスムーズ発話を産出する能力(Capacities=キャパシティ)と、難しい言葉や文法を使って表現しようとする本人自身の挑戦や周りの環境からの負荷(会話の相手の早口など)(Demands=デマンド)とのアンバランスが、吃音を引き起こすというDemands and Capacitiesモデルについて調べています。この理論は概念としては30年程前に提唱されていますが、定量的に数値的にどの程度言語的・心理的負荷の影響を受けているのかはまだ明らかでないため、調べることにより、吃音の進展(症状の重症化)を防ぐ手立ての確立に寄与すると考えています。


 

日本語母語話者の英語学習における韻律(アクセント・イントネーション・リズム)

英語学習にはさまざまな要素があると考えられますが、私たちはとくに韻律(アクセント・イントネーション・リズム)を 形作る基本周波数(音の高さに相当)、強度(音量に相当)、ポーズの習得に着目し、英語音読の音声について日本語母語話者、中国語母語話者、英語母語話者を比較しています。その結果、日本語母語話者は単語と単語の間にポーズをより多く置くという特徴があることがわかりました。また、英語母語話者では、基本周波数(高さ)と強度(音量)に相関がある、すなわち、基本周波数が高い部分では強度も強くなるというように連動している韻律を持っているのに対し、日本語母語話者による英語は、そういった特徴が見られないことが明らかになりました。


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